【10年以上経っても残る親孝行】女子高生が母の日に鶏南蛮そばをプレゼントした話

私がお話したいのは『記憶に残る母の日』。

プレゼントを買うだけのお小遣いを残していなかったので、今の自分にできることを考えて決めたのは、覚えたての「鶏南蛮そば」を振る舞うこと。

乾麺の蕎麦に外国産鶏モモ肉。1番奮発したのはたっぷりの長葱。全てスーパーで調達。

いざ作る。

まず、ぶつ切りの長葱をじっくり焼く。こんがりと。焦げる直前まで焼き色つける。

焦げないように、フライパンでやってみたり、鍋でやってみたり、試行錯誤の30分。

「よし!これだ!」

と叫んだら、母に

「できたの?」

と聞かれたけれど、できあがったのは焼き長葱のみ。

お腹を空かせて待ってる家族は気にせず、絶品鶏南蛮そばを作ることに没頭。

ここから次は、鶏肉に火を通して、麺つゆで煮る。

少し甘めのつゆで煮たいので、煮汁の味見、麺つゆとのバランス調整で1時間。

最後に茹でた麺を盛り付ける。

ここでまた30分。

「まだー?」

と繰り返し言われますが、焦らない焦らない。

盛り付けで味わいも変わる。集中力との勝負。

麺をくるりと回し、鶏肉、長葱を菜箸で1つずつセット。脇から麺つゆを静かに注ぐ。

「できたー!!」

2時間かかった鶏南蛮そば。

「やっと食べれる〜♪」

と母言ったものの、ここからは写メタイム。

上から横から斜めから繰り返し撮影。

「まだー??」

今度は私がお預け…

そうして、ようやく落ち着いて席に着き

「いただきまーす!」

私からの母の日のプレゼント。

手作り鶏南蛮そば。

今日の夕食はこの1品。

大切に食べてくれる母。

とはいっても10分くらいで食べ終え、残ったのは白い丼と箸のみ。

葱も蕎麦も、おつゆも全て胃袋の中。

言ってしまえばいつもと同じように夕食を食べただけだけど。

「美味しかった。ご馳走作ってくれて本当にありがとう」

母が想像以上に喜んでくれ、大切に食べてくれたこと。

人の為に料理する楽しさを、私はこのとき知った。

あれから10年以上が経ち、母の日には毎年プレゼントを贈っている。

傘やスカーフ、今でも大切に使ってくれているものはたくさんある。

かたや10分で食べた蕎麦は体のどこにも残ってないし、写真だって携帯電話の世代交代で見ることができない。

でも、

母に聞いた時にも

「あの時のお蕎麦、美味しかったよね」

って覚えててくれている。

当時は、

「鶏南蛮そば作っただけなのにこんなに喜んでもらえるなんて、楽だな~母の日って」

くらいしか考えていなかった。

10年以上経ってこんなに色濃く鮮明に記憶に残り続けるとは思ってもみなかった。

かといって

今も同じようなことできる?

それに

2時間かけて作った鶏南蛮そばを、また同じように喜んでもらえる?

と考えると、疑問が頭をよぎる。

きっと、

当時の私が母のためにできる最大限のプレゼントを用意したことが、その気持ちが伝わったことが、あの母の笑顔になって、親孝行になった

のだと思う。

今は当時のようなこだわり抜く体力も時間もない。

あの時の私にしかできない最高のもてなしだった。

「親孝行ってなんだろうな…」

と悩んでいる貴方に伝えたい。

その悩んでいる時間も無駄ではなくて、とことん悩んで悩む。

できることがちっぽけに感じるかもしれないけど、

今の貴方の全力でおもてなししたら、それはとてもとてもとても大きい親孝行になる。

そして、相手にも伝わる。

親がいなくなった後もずっと残り続ける貴方が生きていくうえで大切な思い出になっていくのだから。